今回は「博多織」の宮嶋美紀先生にお話を伺いました。「博多織」は、今から約770年前の鎌倉時代にその起源があると言われ、1600年代に黒田長政が幕府に献上したことから、「献上博多織」として広く知られるようになりました。
・「博多織」を始められたきっかけは何ですか。
以前から「布」が好きで布に関わった仕事がしたいと思いました。「博多織」は2年間「博多織デベロップメントカレッジ」で習いました。実を言うと、「博多織」を習う前まではどんな布でも良いと思っていましたが、今では「博多織」の良さにすっかり魅了されてしまいました。
・「博多織」の特徴はなんですか。
一つ例を挙げますと、「博多織」で一番よく知られているのは着物の「帯」ですが、「博多織」の帯は丈夫でしっかりしていて、動いてもずれにくいです。女性が育児や家事に勤しんでも、きっと昔の武士が刀を差して動いても、緩まないのが特徴です。
・「博多織」の制作に関して教えてください。
女性用の帯は長さが約5mありますが、実際に機で織るのは1週間程度です。しかし、その準備が大変です。「博多織」は経糸(タテ糸)で模様を作りますが、私が作っているものは一本の帯に7,500本の経糸が使われます。たくさんの糸を、同じ張り具合になるよう準備していきます。それを一気に進めていくのは集中力が必要ですからその作業だけでも大変ですね。その後、一本一本経糸を機に掛けますが、数が数だけに膨大な作業になります。準備を含めると一本の帯に実に3か月は必要です。
・「博多織」の産業化・国際化に関してどう思われますか。
やはりこれからは伝統「産業」として次世代に残す努力が必要だと思います。織物の文化は全世界にあって、それぞれがどこかでつながっていると思います。「博多織」の幾何学模様がギリシャや中東でも見られるのがその例です。そのつながりを探り、またお互いの良いところを学ぶのも面白いかもしれませんね。
・先生の作品の特徴を教えてください。
絹を使っているので絹ならではの光沢を生かそうとしています。同じ糸でも織り方、見る方向、隣り合わせの色によってその光沢とイメージが変わるからです。
・最後にホームページのご覧の方にお一言お願いできますか。
日本も韓国も、若い方がもっともっと自国の伝統工芸に関心を持って欲しいですね。
宮嶋先生の工房「博多おりおり堂」は、地下鉄「祇園駅」の近くで一般見学(要予約)もできます。工房にある大きな織機と機に掛けられた無数の糸を見ることで、伝統工芸の凄さと素晴らしさを肌で感じることができました。作品には、伝統的な「帯」はもちろん、世界的な商品とコラボした作品、「博多織」でできたテーブルセンターや小物などの手軽に購入できるものもあります。
・「博多おりおり堂」の情報
住所:福岡市博多区御供所町12-2
電話:050-3490-1192
開館時間:10:00~17:00(定休日:水曜日)